鏡に映して

いつも、お読みいただき有難うございます。目を閉じて見えるもの。著作権は私(藍の波及び芦野往人)にあります。掲載内容の変更、および全容の削除などをご了承なく行うことがあります。ご了解をお願いいたします。

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峠の灯り

峠の灯り










何処から来なさった

ほう 峠を越えてのう

難儀なさいましたなあ 

とにかく入りなされ

さあ遠慮はいらんからのう

引き戸から灯りが転がってきた

私は蓑を外して土間に入る

難所続きの峠を越えて

まして横殴りの雨の中

この家の灯りの有りがたく

主の情けが身に染みる

囲炉裏の小枝が燃え上がる

親父の優しさに堪えた涙

汁に零れて塩辛く


誰の世話にもならねえ

啖呵を切って生きてきた

意地も誇りも流し去る

峠の雨が屋根を射して降り続く







ashinoyukito

平成二十八年九月十三日
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  1. 2016/11/19(土) 08:03:08|
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虫奏曲

虫奏曲









秋の雨あがり 夜は

静寂にちろころちろころ

人恋し恋しと沁みてくる

一生に一度のめぐり逢い

なんで忘れよか 主の声

ちろころちろころ呼ぶ音は

こころを揺らして鈴となる





ashinoyukito

平成二十八年九月十一日
  1. 2016/11/18(金) 02:15:41|
  2. | コメント:0

トランペット

トランペット









哀しい音がする

逝った人に届くように

何時までも余韻を残す

美しい所作で踊りながら

悲しい音だわ あなたは言う

そういえば暗い星雲に滲みて

消えて行きそうで消えない音





shinoyukito

平成二十八年九月十一日
  1. 2016/11/18(金) 02:13:27|
  2. | コメント:0

幼い魔女

幼い魔女









魔女というには幼い子

灰色のマントに朝陽を抱く

魔法の箒をどこに忘れたか

朝焼けの街を探して歩く

心配カラスが覗き込む

羽を使って髪を梳いている

歯ブラシは小鳥のふわふわ羽毛

露のひかりを掬っては集めて

前髪を濡らしたり ぶくぶくしたり


さてこちらは黒い森

母さん魔女が水晶玉に手をかざす

露をすする幼い我が子が見える

灰色マントに魔法の糸をかけ

刺し網のように引き上げる

幼い魔女の初めての独り旅

楽しかったこと面白かったこと

怖かったこと などなどなど

母さんのマントに包まれて

いつしか夢の中に溶けていく











芦野往人

平成二十八年九月十一日
  1. 2016/11/17(木) 01:06:58|
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墓名詩

墓名詩










おちてくる言葉などなく

弱さも哀しさも

悦びも楽しさも

撹拌して沈殿させるもの

知的な好奇心のなぞ解き

可能な限り反芻して

さり気なく人生を飾ろうとする

自分のイメージを作り上げる

それが一篇の詩であれば


読む人の批判を恐れる事無く

ただ墓名詩とするためだけに











芦野往人

平成二十八年九月九日
  1. 2016/11/17(木) 01:04:10|
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名簿

名簿










返送された葉書が語っている

赤いスタンプのあて先不明

何処かで元気でいるなら其れで良い

移動先も知らせず行ったやつ

あれから何年たっただろう

栗くり坊主の顔のまま

おかっぱ頭やおさげ髪

あのときあの姿そのままに

あれからどうしているだろうか

名前の上にチェックして

一人ひとりと話をする

白髪にならず禿もせず

あれからの事を訊いてくる

私を見ながらはしゃいで笑う

「歳を取ったなあ」と


相変わらず私は名簿の整理

二本線で消せない君の名前

彼の岸に旅だったとしても

来年もその次も名簿に残しておく

君は小さな声で詫びている

「すまないなあ」とひとこと







芦野往人
平成二十八年九月六日
  1. 2016/11/15(火) 08:09:34|
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夜と朝と

夜と朝と










夜を黒く塗り過ぎたから

ゆっくりと朝の色が来る

一粒のひかりが蛍の様に来て

夜と朝を微かに分けていく

生する者たちが露から出でて

シンフォニーが尊大に始まる

わたしは少しずつ息を整えて

文字を探して色を点していく








芦野往人

平成二十八年九月五日
  1. 2016/11/15(火) 08:06:47|
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分水嶺

分水嶺










君につながる旅は

空路であれ 

鉄路であれ 

海路であれ

情けない徒歩であれ

何時も崖っぷちの雲海に阻まれる


君につながる空は

君につながる大地は


君につながる海は

躊躇する理性に途切れている

ほろびゆく勇気はなく

魂のみ切り刻んで

分水嶺から右に左に落して迷う





芦野往人

平成二十八年九月四日
  1. 2016/11/15(火) 08:04:59|
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そら

そら










雨の墜ちてこないうちに旅に出る

数えるほどの時間を懐に入れて

予定の無い旅に出る

八ヶ岳を遠く近くゆく


稜線をたどれば指先が碧くなる

「阿蘇の空に似ている」君は掴もうとする

逆光が髪を解いて煌めいている


君の故郷の空は丸くて大きい

私は小さな四角い都会の空を見ていた

不細工に纏まった小さな空

それでも掛け替えのない私の空だ


旅に出た筈なのにこの蒼空を抱かれてしまう

私に似合うのは此処

数えるほどの時間を君の為に



芦野往人

平成二十八年九月四日
  1. 2016/11/14(月) 08:32:50|
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夏が逝く

夏が逝く









誇り高く夏が逝く

恨み事 一身に受けて

誇り高く夏が逝く

夏に秋を探すな

夏に春の影を追うな

言葉にしようとすれば

焼けつくしてしまうから


誇り高く夏が逝く

私の中に私を探すな

私の中に私を見るな

私の中にあなたを探すな

私の中にあなたを見るな

希望と失望が燃え盛る

夏は夏 誇り高く逝く





ashinoyukito

平成二十八年九月朔日
  1. 2016/11/14(月) 08:29:19|
  2. | コメント:0

カラオケ

カラオケ








声が良くてしびれてしまう

言われるたびに鼻が高くなる


家内に話すと良かったねと斜め顔

そんなにいい女がいるかと訊く

いや みんな爺さん婆さんばかりさ

あら お父さんだって立派な爺さんだ

違いない 違いない

其れを忘れて一本取られたなあ





ashinoyukito
  1. 2016/11/14(月) 08:24:10|
  2. | コメント:0

柳川鍋

柳川鍋









呑む誘いの電話

暑気払いに泥鰌をつきあえと


間口一間半の小さな呑み屋

無口な親父と品の良い女将

カウンターに椅子が七つ

勿論エアコンはない

入り口も窓も開けたまま


親父 柳川二人前たのむよ
一つは開き 一つは丸で


お前元気か 俺は元気だ

先ずは乾杯ってところだ

それから沙魚と野菜の天ぷら

泥鰌を割く親父の丸い背中

この前より小さくなった


はいよおまちどさん

口の中で熱さを転がして食う

夏はこれだな これに限る

大きな汗がやたらとたれる

夏はこれだな これに限る

ぐつぐつ ふうふう たらたら 






夏の記憶から

ashinoyukito
  1. 2016/11/04(金) 03:53:09|
  2. | コメント:0

夜考

夜考









日を跨いで既に一時間

昨日の時間切れ目なく

特に意味も無く過ぎていく


そういえば年末年始もそうだった

鐘の音がごわーあんとなって

行く年くる年をTVで知った


日も月も年も連なっているのに

生まれ変われるような感じして

晴れがましく迎えた正月であった


日を束ね月を数えて 今は秋も末

愚にもつかない考えに今夜も眠れず



ashinoyukito
  1. 2016/11/04(金) 03:50:50|
  2. | コメント:0

夏の蝶

夏の蝶










眩暈してふらふら彷徨う白い蝶

上昇気流にまきあげられて雲の中

ひんやり雲に包まれて

焼かれた翅を振るわせる

ありがとう 雲さん

すっかり元気になりました

ふんわり雲から飛び立って

触角ふりふり降りてくる





ashinoyukito
  1. 2016/11/04(金) 03:48:11|
  2. | コメント:0

廃屋

廃屋









深いやぶをラッセルして前に進む

茅葺の屋根を行くような

足元に大地はなく空中を歩く

途中で同行した渓流釣り二人と

荒れ果てた廃屋に辿りついて

疲れ切った体を根太に横たえる

羽目板も床板も剥がされた骨の上

破れた屋根から夜空が落ちてくる

諦めた登頂に代わる廃屋の夜の想い出

あれは山の精霊の潜むところ

若かった私が星々の中に溶けた廃屋







ashinoyukito
  1. 2016/11/02(水) 21:11:35|
  2. | コメント:0

ゆりかご

ゆりかご










眠れますか

問う人の声が聞こえる

爪の先に触れて眠ろうか

無垢な赤子の様に甘えて

夢の中に揺れてみようか

雲から下ろしたゆりかご

清らかな風にゆらゆら

眠りに堕ちていく夜に






ashinoyukito
  1. 2016/11/02(水) 21:10:00|
  2. | コメント:0
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