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鏡に映して・分水嶺に咲く花

いつも、お読みいただき有難うございます。目を閉じて見えるもの。著作権は私(阜可 忠:藍の波及び芦野往人)にあります。掲載内容の変更、および全容の削除などをご了承なく行うことがあります。ご了解をお願いいたします。

深川記(十)

深川記(十)



 
あの夜清治郎と別れて
 
お裕はお恭の家に泊った
 
店の2階でもよいのだが
 
目と鼻の先のお恭の自宅に泊ることになった
 
 
此処で少し姉妹の母親について記しておきたい
 
 
この家を建てたのは姉妹の母親
 
辰巳芸者の文子として記憶されている
 
旗本の二男広之進に見初められ
 
結婚したのは二十歳の時

一緒になれなければ
 
大川に二人して飛び込むといって
 
親を心配させた 今でも語り草になっている
 
そんな大恋愛の末、結婚したが
 
広之進は病に倒れ若くして亡くなってしまった
 
その時文子は二十七
 
二人の子供を抱え途方に暮れた
 
嘆いてばかりはいられない
 
文子は辰巳芸者にもどった
 
 
三十一歳の時に贔屓旦那の勧めもあって

芸者をやめ小料理居酒屋を開いた
 
お不動様の近く
 
母の文子が亡くなって二年がたつ
 
それがお恭の今の店である
 
 
 
 
 
 
 
阜可 忠
 
平成三十年二月十三日
 
 
 
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  1. 2018/02/13(火) 09:56:15|
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深川記(八)

深川記(八)




 
 
一通り片付けが終わって
 
板前の新吉が帰り
 
手伝いのお時も帰って行った
 
まだ賑わいの匂いの残る店
 
清治郎を残して鳶の若頭が
 
明日は早いんでと言って店を出る
 
 
清さん 呑みなおそ
 
お恭が隣に座り酒を注ぐ
 
 
お裕がおくれて酌をする
 
すまねえなあ
 

酒飲み冥利
 
男冥利に尽きるというもの

そりゃあそうだ
 
こんなことはめったにない
 
美人姉妹の揃い酒
 
 
何を思い出したのか
 
お裕が もう蕎麦屋はやめた
 
と言い出した
 
聞けば亭主が何も手伝わない
 
自分で始めたくせに遊んでばかり
 
段々口調がきつくなる
 
姉さん わたし別れる あんな奴
 
まあまあと繕うとする清治郎
 
お恭はそれが良い 早いほうがいい
 
あたしは前から反対だった
 
気の強いお裕は涙一つ零さない
 
清治郎に酌を迫ってグイと呑む
 
 
それにしても三人とも酒豪だ

誰も乱れるところがない
 
絡むわけでは無し
 
泣くわけでは無し
 
さっぱりしたものだ
 
 
お恭の三味線でお裕が端唄を唄う
 
お裕の澄んだ声が滲みてくる
 
亡くなった母の厳しい置き土産
 
けりのいいところで三味線を置いて
 
さあ店をしめますよとお恭

店を出ると 藪から棒に
 
やぶからぼうに 梅の花みにいきたい

清さん 聞いてるの
 
向島百花園つれって 
 
清次郎の手を握って放さない
 
お裕も いきましょう
 
行きましようとはやし立てる
 
 
 
 
後で読み返し手を入れます。ご了承を。 

阜可 忠

平成三十年一月二十七日
 
 
  1. 2018/01/27(土) 02:28:52|
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深川記(七)

深川記(七)


 
 
噂をすれば影のたとえ
 
どなたさまも覚えがありましょう
 
だから嫌な奴の噂はしねえ
 
清治郎はそう決めている
 
 
お恭と清治郎の笑いを冷かすように
 
あら 楽しそう
 
随分と仲のいい事
 
言いながらお裕が暖簾を分けてくる
 
やはり噂をすれば影 ちげえねえ
 
 
清さん 先日はどうも
 
清治郎に会釈して お恭の隣にすわる
 
いずれ劣らぬ深川名花が二つ並んだ
 
店が一気に明るくなった
 
とたんに客が来て瞬く間に席が埋まる
 
 
ゆっくりしていって下さいな
 
頼んだよとお裕に言って お恭は席を立つ
 
板前の新吉や手伝いのお時さんもきて
 
お恭はあれこれ頼んでいる
 
十人ほどの客はみんなお馴染
 
なかにはお銚子を運ぶ奴もいる
 
みんな気心知れた良いやつばかり
 
 
こんばんは 清さん久し振り
 
お裕ちゃんも元気そうで
 
そういうのは鳶の若頭
 
まあ いっぱい 
 
互いにすすめたりすすんだり
 
あちらこちらに話の花が咲く
 
暮六っ半になると店も少し落ち着いて
 
そろそろ帰りだす客もいる
 
一人かえり二人減り

店が急に静かになる

 
お恭が酒の後を片し出す
 
お裕も襷をかけてあねさんかぶり
 
卓を拭たりして姉を手伝っている 

 
 
七話はここまで。
お付き合いいただき有難うございます。
文法等は相変わらずのでたらめ。
お許しを。

阜可 忠
 
平成三十年一月二十三日
  1. 2018/01/23(火) 21:57:52|
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深川記(六)

深川記(六)
 
 
藍染め暖簾に泳ぐ魚が二つ
 
杉板に小料理と書いて恭とある

 
ごめんよ 清治郎の声にお恭
 
はあい あら 清さんじゃないか
 
久し振り おめでとうと 言いかけて
 
まだ おめでとうでいいのかえ
 
いいんだろう まだ七草だ
 
そうだよね お恭は言いながら
 
清治郎の好きな酒と肴を揃えている

注文を訊かなくても解る
 
勝手知ったる心うち
 
結い上げた髪が細かく揺れている
 
相変わらず綺麗な人だ
 
清治郎がそう思うのには理由が有る
 
深川美人といえばお恭とお裕
 
此の界隈は言うに及ばず
 
大川を渡って日本橋神田まで
 
江戸の町に知らないものは無い
 
ましてお恭は初代ミスゆかた
 
姉妹見たさの八幡様参りと言われたものだ
 
 
まだ清治郎のほかに客は無い
 
お恭が珍しく前にすわり酌をする
 
酒を呑みほして清治郎が漏らした
 
「この間 お裕さんに会ったよ
 
閻魔堂の角で屋台蕎麦屋を
 
名前をきくまで気が付かなかった
 
器量よしはあんたと同じだが」
 
「あら同じなの 清さんはお裕なんだ
 
あたしかと思っていたのに」
 
お恭がすねた振りをする
 
「とんでもねえ 無論お恭さんだ」
 
慌てる清治郎にお恭が笑う
 
つられて清治郎が笑う
 
他愛もないことでふたり揃って初笑い
 
 
 
思いがけず筆はしり過ぎ(六)となりまする
 
話し言葉など時代考証はしていません。何卒ご理解を。
 
阜可 忠
 
平成三十年一月二十二日
  1. 2018/01/22(月) 00:40:22|
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深川記(五)

深川記(五)



 
 
七日七草の明六つ 障子に薄明かり
 
竈に火を入れて飯を炊く
 
独り身の清治郎には寒い朝
 
さっと朝食を済ませて
 
紺の股引に印半纏をひっかける
 
さてっと今日から仕事だ
 
清治郎は外に出る
 
源ちゃんと連れ立って冬木町
 
 
木場では老舗の材木問屋
 
旦那の喜一郎が待っている
 
番頭にも挨拶して焚火にあたる
 
おかみさんの白湯で胃の腑を温めて
 
さて川並の仕事が始まる
 
 
堀の丸太にひょいとのる
 
長い竹竿鳶口を器用に操って
 
丸太を外したり泳がせたり
 
また引き寄せて組み直したりする
 
水辺の冬仕事は慣れたものでも辛い

 
喜一郎の丸太の処理は大まか終わった
 
あすは此処から筏を操って
 
石島町の材木問屋に届けるばかり
 
二人が筏を降りたのは昼八つ半
 
 
どうだい 仲町でいっぺえ
 
左指を丸め口に当てて飲む仕草
 
清治郎の誘いに源は首を横に振る
 
すまねえ 子供が風邪ひいているんで
 
大変だなあ 所帯持ちはと呟いて 
 
清治郎は源と別れた
 
 
久しぶりにお恭の店で一杯飲むか
 
八幡様をお参りしてから そう決めて
 
足を速める石畳の清治郎
 
 
 
深川記もどうやら(五)となりまして
お読みくださる方には退屈なされぬか 
今少しのご辛抱をお願いいたしまする
 
阜可 忠
 
平成三十年一月二十一日
 
  1. 2018/01/21(日) 21:41:10|
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